(摂南大学)─その1:Introduction─
1999年摂南大学工学部の数学入試問題に次のようなものがある。
を実数を係数とする多項式とする。実数に対し、から以下帰納的にで数列を定める。このとき、であることは、であるためのどのような条件か。下から選べ。
(1)必要十分条件である。
(2)必要条件だが十分条件ではない。
(3)十分条件だか必要条件ではない。
(4)必要条件でも十分条件でもない。
この問題のネタ自体は有名で、例えばの場合は多くの参考書や問題集にも取り上げられている。このような問題の場合、普通は、まずとなるを見つけなさい。それが極限値になるはずだからを評価しなさい。代数的に(数I的に)やる方法と平均値の定理に持ち込む方法とがありますよ。と教えている。
具体的には次のような感じだ。
で定義される数列の極限値を求めよ。
[解]
まず、となるを求めると、からとわかる。
から帰納的になので、極限値はと予想できる。
を評価しよう。
であるが、であることに注意すればである。よって
が成り立つ。これを繰り返し使えば
となるので求める極限値がとなることが従う。
しかし、よく考えてみると、この教え方だと最初の摂南大の問題に記述答案を書くことはかなり困難である。それは、次の2つの意味である。1つは必要性
ならばが成り立つ。
ということの証明を端折っている点であり、もうひとつは十分性
ならばが成り立つ。
が正しいと錯覚させている点にある。最初に取り上げた摂南大の問題はこの2点についての理解を問うていることになる。もちろんマークセンスの問題なので、証明や反例を考えたりしなくても解答することはできる。上のような有名な類題を知っていれば「当たり前」で(A)と答えてしまいそうになる。記述式答案を書かせたら、摂南大学工学部受験生の、いや難関理系国公立受験生のどのくらいの生徒がこの問題に正しく解答することができるのだろうか。
この問題をいろいろな側面から考えてみることは、関数の極限や連続性についてよく考えてみるきっかけとなるし、このような反復合成型数列の極限値という案外高級な話題に興味を持たせるきっかけとなると思う。