─信州大:その1─
1998年信州大学入試問題の数学に次のような問題がある。
を
より大きい自然数とするとき,
をみたす整数解
は存在しない」というのはフェルマーの最終定理として有名である.しかし,多くの数学者の努力にもかかわらず,一般に証明されていなかった.ところが1995年この定理の証明がワイルスの100ページを超える大論文と,テイラーとの共著論文により与えられた.当然,
を満たす整数解
は存在しない.
さて,ここではフェルマーの定理を知らないものとして,次を証明せよ.
を0でない整数とし,もしも等式
が成立しているならば,
のうち少なくとも一つは
の倍数である.
背理法で証明することになるのだろう。
[ひとつの解答例]
もし
がすべて
の倍数ではないとすれば,
または
の形をしている。この3乗を計算してみると
である。つまりを
で割った余りは
または
しかない。
したがって、を
で割った余りは、
から
のいずれかに限られる。ところが
も
の倍数ではないので、
の
で割った余りは
または
しかない。これは矛盾である。
この問題が良い問題であるかどうかということの判断は私にはできない。整数問題を考えるときには、「余りによる分類」がポイントになることが多い。
都立大の問題を類題として取り上げておこう。
をみたす有理数
は存在しないことを示せ.
この問題でもで割った余りで分類することが大切である。もうひとつのポイントは有理数をどう扱うかということだろう。
[ひとつの解答例]
とし,
は共通する素因数を持たない(つまり最大公約数が
)としてよい。このとき、
が成り立つ。
次に、ある整数
の2乗
を3で割った余りを考える。
を
で割った余りは
の3通りがあるが、
であることから,を
で割った余りは
の2通りしかない。
いま、
は
で割り切れているから
も
で割り切れる。ところが、
も
も
で割った余りは
しかありえないので、その和が
で割り切れるためには、
がともに3で割り切れるしかない。ということは、
が
で割り切れることになる。これは、
がともに
で割り切れることを意味する。よって、
が
で割り切れることになり、
は
で割り切れる。よって
が
で割り切れることになる。これは、
がすべて
で割り切れることを意味しているから、
の取り方に反し矛盾である。
この解答例でポイントになったのは、
(1) 整数
を
で割った余りは
しかありえない。
(2) 整数が
で割り切れることと整数
が
で割り切れることは必要十分である。
(3) 整数に対し、
が
で割り切れることと、
がともに
で割り切れることとは必要十分である。
ということである。これはで割った余りによる分類を丁寧に調べることで証明できる。この考え方は、整数問題を解くための最も基本的な道具である。